公正証書遺言が無効になることも!?
安全・確実な公正証書遺言が・・・
公正証書遺言は、遺言者が証人2人の立会いの下で公証人に遺言の内容を口授し、それに基づき公証人が遺言者の真意を正確に書面にまとめて公正証書遺言として作成します。
公証人は、長年法律実務に携わってきた法律の専門家で、正確な法律知識と豊富な経験を有しています。その公証人が携わって作成される公正証書遺言は、方式の不備で無効になる恐れはほぼないと言っても過言ではないでしょう。
しかし、公正証書遺言といえども全く無効になることはないのか、といえばそうでもありません。稀な例ではありますが実際の裁判例では、公正証書遺言が無効になった判例があります。
遺言者の意思判断能力が欠けていた場合
手続通りに遺言書は作成されているが、遺言者の意思判断能力が欠けている中で作成されたのではないか?といった疑いのある公正証書遺言が無効となった判例があります。
公正証書遺言の場合、公証人による意思確認・面談、証人2人以上の立会いにおける遺言書の読み聞かせ等を経て作成されることから、公正証書遺言は「絶対安全」「無効になることはない」と思われがちですが、実際は「絶対安全とは言い切れない」ということを認識することが必要です。
この対策としては、認知症等により意思判断能力が低下してしまわない健康で元気なうちに遺言を作成するほかありません。
生前言っていた事と遺言内容が著しく異なる場合
①遺言者は自分の会社を孫に継がせたいと強く望んでいた
②相続させる財産の価値は相続人間の平等を保ちたいと配慮していた
③ところが遺言は全財産を他家に嫁いだ相続人に相続させるという内容になっていた
④本件遺言は、会社の経営権争いの最中に作成された
上記の過程を経た公正証書遺言は、遺言者が生前望んでいた事と遺言内容がかけ離れていて、遺言者が意思を翻したことについて合理的な理由が見当たらないこと。
また遺言者が94歳で遺言作成から12日後にはせん妄とみられる状態にあったことなどからして、遺言作成当時、遺言者に遺言能力は認められないとして公正証書による遺言を無効とした事例です。
遺言作成前に医師よりアルツハイマー型認知症の鑑定があった
公正証書遺言が作成される約2か月前に、医師が家庭裁判所から鑑定の依頼を受けており、同医師が「アルツハイマー型認知症を発病しており、程度は中等度以上」と鑑定しており、かつ、公正証書遺言作成日の約3週間後に当該鑑定結果に基づいて成年後見が開始された等の事実関係に照らせば、遺言者に遺言作成当時遺言能力がなかったものと認められるとして、公正証書による遺言を無効にした判例。
上に挙げた判例からして、自分の築いた大切な財産を次の世代にどう引き継ぐかといった意思表示をする遺言書は、健康なうちに作成することをお勧めします。