特定の相続人に相続させたくないときは(相続人排除)
相続人の廃除とは
親子間での虐待などのニュースを見かけることが珍しくなくなりました。
実際問題、血のつながった子供やや兄弟であっても、自分への虐待や侮辱行為があって財産を譲りたくないと思うこともあるでしょう。
そういった場合に、被相続人(財産を残す人)は「相続排除」の制度を利用して、相続人から相続権を剥奪することができます。
相続人の廃除とは、相続人から虐待を受けたり、重大な侮辱を受けたりしたとき、その他著しい非行が相続人にあったときに、被相続人が家庭裁判所に請求して相続人の地位を奪うことをいいます。
この廃除の請求は、生前でも遺言でもすることはできますが、申し立ては被相続人しかすることはできません。
廃除をしたい被相続人は
生前に自分で相続人排除を家庭裁判所へ請求する
遺言書で相続人を廃除する
このどちらかの方法をとることになります。
遺言で相続人の廃除をする場合は、遺言執行者が家庭裁判所に相続人排除の請求をすることになりますので、必ず遺言執行者を指定しておく必要があります。
相続排除の事由
相続排除を被相続人ができるといっても、やみくもにできるわけではありません。
この「相続排除」は法定相続人の最低限度の権利として保障としている遺留分まで剥奪する強力な効果を持つものだからです。
ですので、相続排除を行うには一定の廃除事由が必要になります。
相続人が被相続人を虐待した場合
相続人が被相続人に対して重大な侮辱を与えた場合
その他相続人に著しい非行があった場合
「虐待」と「重大な侮辱」は書いてある通りですが、実際、何が虐待に当たり、何が重大な侮辱に当たるのかは難しいものがあります。
傷害罪に当たるまたはそれに近いような虐待行為や、侮辱罪に当たるまたはそれに準ずるような侮辱行為でなければ、廃除事由に該当しないという判断がされることが多いようです。
「著しい非行」については、単純に素行が不良だったという程度では、廃除事由にならないでしょう。
■犯罪行為
■被相続人を遺棄する行為
■被相続人の財産を浪費する行為
上記ような具体的な行為や、単独では著しい非行に当たらなくても、複数の非行行為が重なり、それにより家族の協力関係や信頼関係が失われたとみられるような場合には、廃除が認められた裁判例はあります。