永住許可申請
既に日本にいる外国人が、自分の持っている在留資格から「永住者」の在留資格に変更する時の手続きです。
永住許可申請も在留資格変更の一種ですが、永住権を取得すると日本での活動や在留期間の制限がなくなるという特性上、他の在留資格よりも厳しい審査基準が設けられています。
永住許可申請では、「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」といった面から審査が行われます。
日本の永住権とは
日本の永住権とは、外国人が「在留期間を制限されることなく」日本に永住できる権利のことです。
永住許可申請が許可された外国人には「永住者」という在留資格が与えられます。
永住権は外国人が「国籍はそのまま」で日本に永住することであり、外国人が日本の国籍を取得する帰化とは色々な面で違いがあります。
永住権を取得するメリット
1 就労制限がない
日本の永住権を取得すると「就労の制限」が無くなります。
通常、日本の在留資格にはそれぞれ「行ってOKな活動」が決められています。就労系の在留資格であれば業務内容が決まっていますし、留学生であればパチンコ屋・麻雀店・キャバクラなどでアルバイトをすることはNGです。
このような「就労の制限」が永住権を取得すると無くなりますので、適法な仕事であればどんな仕事でもできるようになるというメリットがあります。
ちなみに、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった在留資格も永住者と同じく就労の制限はありませんが、永住者と違い在留期間の制限はあります。
2 在留期限がない
日本の永住権を取得すると「在留期間の制限」が無くなります。
永住権を取得すると在留期間の制限を受けないため、今まで行っていた在留期間の更新申請をする必要がなくなります。
永住者以外の在留資格だと在留期間の更新が不許可になるリスクがあるため、この「在留期間の制限を受けない」という点は大きなメリットです。
3 社会的な信用が上がる
日本の永住権を取得すると「社会的な信用」が上がります。
永住権を取得すると日本での信用度が上がるため、「クレジットカードを作る時の審査」や「家を買う時の住宅ローンの審査」などに通りやすくなります。
また、永住者は長期雇用が見込めるため、職場等の条件面で他の在留資格を持つ外国人より優遇されるケースもあります。
4 日本での起業が簡単
日本の永住権を取得すると「起業」が簡単になります。
まず、永住権を取得することで起業の時の銀行融資を受けやすくなります。永住者には、「在留期間の制限が無い」や「日本での生活基盤がある」というプラス材料があるため、銀行も融資をしやすくなります。
また、永住者が起業をする場合は「経営・管理」の在留資格に変更する必要がありません。経営・管理の在留資格審査は現在厳しくなっていますので、これも永住権を取得するメリットと言えます。
参考までに、「日本人の配偶者等」や「定住者」などの在留資格も起業の時に在留資格を変更する必要はありません。
5 離婚しても在留資格がそのまま
日本の永住権を取得すると、離婚をしても在留資格変更の必要がなくなります。
「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格は離婚をした場合に在留資格を変更する必要があります。
就労系の在留資格や定住者などへの変更になりますが、手間・時間・お金がかかります。また、変更する在留資格の条件をクリアしている必要がありますので、申請が不許可になるリスクもあります。
こういった、「離婚をした時の手間やリスク」が永住権の場合はありません。
永住権を取得する条件
次の1~3が日本の永住権を取得するための条件です。
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること
- 日本にも利益があること
なお、日本人・永住者又は特別永住者の配偶者や子である場合は、「3」の条件のみをクリアすればOKとされています。
1 素行が善良であること
要するに「日本の法律を守って生活していること」です。
「法律を守って」には以下の2種類のパターンがあります。
◆1回でNGなケース
日本の法令に違反して「懲役・禁固・罰金・拘留・科料」に1度でも課された場合はNGです。
懲役と禁固の場合は、刑期満了後10年を経過(執行猶予の場合は執行猶予期間満了後5年を経過)すると永住権の審査上リセットされます。
罰金・拘留・科料の場合は、罰金等の支払い後5年を経過すると永住権の審査上リセットされます。
◆何度かあるとNGなケース
交通違反(車の運転等)が何度もある場合はNGです。例えば、駐車違反・信号無視・スピード違反で反則金を支払った場合などです。
交通違反の明確な規定はありませんが、目安は過去5年で5回以下なら許可の可能性があるといった感じです。ただし、例えば4回しか交通違反がなくても、永住権申請の直近で立て続けに交通違反をしている場合などは不許可の可能性が高くなります。
また、交通違反でも飲酒運転やひき逃げ等で罰金刑を受けた場合などは、「1回でNGなケース」に該当します。
2 独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること
要するに「日本で安定した生活ができる給料をもらっていこと」です。
具体的な給料の額は規定されていませんが、年収300万円以上が実務上の目安です。扶養する家族(夫・妻・子供など)がいる場合は、1人あたり80万円程度を上乗せした額が目安になります。
例えば、永住権申請をする人に奥さんと子供が1人いる場合は、「300万円+80万円+80万円=460万円」が年収の目安になります。
この年収については、変更前の在留資格が「日本人・永住者の配偶者」と「高度人材(70点以上)」の場合は過去3年分、就労系の在留資格や定住者、家族滞在の場合は過去5年分を提出書類で確認されます。
また、転職は永住権申請でマイナス評価になる可能性があります。特に永住権申請の直近1年以内の転職や、短期間に何回も転職している場合は注意が必要です。ただし、キャリアアップの為の転職(給料が上がるなど)の場合は説明次第でマイナス評価にならない場合もあります。
3 日本にも利益があること
要するに「法律を守って生活し、税金等をしっかり支払うこと」です。
在留カードの更新
在留資格「永住者」には在留期間がありませんので在留期間を更新する手続きは不要です。
しかし、永住者が持つ「在留カードには7年の有効期間がある」ので、在留カードの有効期間を更新する手続きは行う必要があります。